トップニュース日本海新聞コラム「アートと地域」⑥林曉甫さん
日本海新聞コラム「アートと地域」⑥林曉甫さん

連載コラム「アートと地域」最終回は、鳥取藝住祭総合ディレクター林曉甫が登場です。

ディレクターが鳥取藝住祭の活動の中にみつけた「カタチに残らない何か」とは。

12月28日(日)の日本海新聞(朝刊)8面に掲載されました。

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『「カタチに残らない何か」を』

初めて岩美町を訪れた時、アーティストが岩美町で制作した作品を70歳くらいの地元の方に案内してもらった。岩美町では現代美術家による滞在制作と展示が6年前から毎年行われており、その方も作品制作に携わったことをきっかけにしてアートに興味を持ち、友人と香川県の直島にアート作品を鑑賞しに行ったこともあると話してくれた。

街なかなど、アートのために用意された場所ではないところでプロジェクトを企画する仕事をしていると、「アートはわからない」と門前払いされることも多い。彼がそこまで興味を持った理由を知りたくて、「なぜアート作品の制作を手伝うのですか?」と質問すると、「そんなの、認知症予防に決まってるだろ」と笑いながら答えてくれた。曰く、アーティストや仲間と作品をどのように実現させるかを考えたり、作品について話し合ったり、作品が完成した際にお祝いしたりする活動が、脳を活性化させ、認知症予防につながる気がするとのことだ。

私は、地域にアーティストを招きプロジェクトを行うことは、文化芸術の振興に留まらず、福祉・教育・地域経済など様々な領域に影響を与えるものと考えている。例えば「大山アニメーションプロジェクト2014」の招聘アーティスト、チャンキー松本さんといぬんこさんは滞在先の「まぶや」を舞台にしたアニメーション作品を制作した。同時に、彼らの滞在が何かを作り出す楽しみや、よそ者がみた場所の魅力、そして大山町と西荻窪(彼らの居住地)間に交流を生み出すなど「カタチに残らない何か」を残していったことを覚えておきたい。

「カタチに残らない何か」は、数値化したり、費用対効果を簡単に割り出すことができないがゆえに、それをどのように言語化し、多くの人と共有していくか考えていかなければならない。しかし、個人的にはそうした「カタチに残らない何か」の中にこそ、アーティストの滞在制作の成果がその場限りで収束せず、地域に次の可能性をつくりだすことが秘められている気がしてならない。

(林曉甫|鳥取藝住祭2014総合ディレクター)