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日本海新聞連載「日常を拓くこと」―第4回―かわのかみしも(倉吉市関金エリア・小鴨エリア)

Jan 19, 2016
日本海新聞連載「日常を拓くこと」―第4回―かわのかみしも(倉吉市関金エリア・小鴨エリア)

日本海新聞の連載コラム「日常を拓くこと」の第4回が、2016年1月14日(木)に掲載されました。

今回は、倉吉市で開催された「くらよしAIR2015」の中から、関金エリアと小鴨エリアで行われたプロジェクト「かわのかみしも」について、地元出身の映画作家で、「くらよしAIR2015」のアートディレクターを務めた波田野州平さんに執筆して頂きました。

2016年1月14日日本海新聞コラム4

・・・(以下、新聞コラムより本文転載)・・・

倉吉市を流れる小鴨川の流域には、開湯1300年を誇る関金温泉街があり、また日本で最初期に発見されたウラン鉱脈を持つ小鴨地区がある。私は、その上流と下流に位置する両地区をひとつに結んだアートプロジェクトを鳥取藝住祭の中で「かわのかみしも」と名づけ行うことにした。

今となっては温泉街が湯治や旅行客で賑わっていた時代の面影は遠くなり、ウラン鉱が今も地中深くに眠っている事を知る人はあまりいない。この両地区にとって重要な歴史を今一度呼び戻そうとする時、一体芸術にはどんな役割が担えるのだろうか。私はそう考えた時、ミスリードという言葉に「誤読」と「誤誘導」というふたつの意味を重ねあわせ、このプロジェクトの指標とすることに決めた。

関金の滞在作家である写真家のセス・ハイとライターの福田教雄、小鴨に滞在する音楽家のアメフォンには、滞在中に見聞きした事を積極的に誤読してほしいと伝えた。それは作家の個人的な眼でこの地を見てほしいという意味であり、そこから生まれた作品によって、この地に暮らす私たちを、今まで見たこともない場所へ誤誘導してほしいということでもあった。

温泉街の家々に残るすりガラスに熱狂したセス・ハイは、ガラス職人中野吉宗なる人物を創造し、すりガラスから透かし見た戦争と日本経済を報告し、何より日常生活の中に宿る美を印画紙に定着させた。

福田教雄は温泉街のある住人と親密な関係を築きあげ、彼の半生と、温泉街を通り過ぎていった進歩と喪失を、愛ある筆で幻想譚として記した。

アメフォンは倉吉選定歌「ウラン節」のレコードをあえて一度も聞かないことで、この国威発揚の歌に艶と哀愁を添えて再現することに成功した。

しかし私は、この土地の養分を充分に吸い込んだこれらの作品が、ひとつの物になって放流され、お店に並んで私たちの暮らしの中へと流れ着いた時こそが、このプロジェクトが本当に始まる時だと考えている。

(映画作家、くらよしAIR2015アートディレクター 波田野州平)

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