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日本海新聞連載「日常を拓くこと」―第6回―AIR475(米子市)

Feb 9, 2016
日本海新聞連載「日常を拓くこと」―第6回―AIR475(米子市)

鳥取県の地元紙・日本海新聞で、2015年12月から連載して頂いていたコラム「日常を拓くこと」(全6回)の最終回が、2月4日(木)に掲載されました。

2013年から米子市で行っている「AIR475(エアヨナゴ)」について、米子建築塾の来間直樹さんに執筆して頂きました。

2016年2月4日日本海新聞コラム6

・・・(以下、新聞コラムより本文転載)・・・

鳥取県内10団体により展開された鳥取藝住祭における米子でのプロジェクトAIR475(エアヨナゴ)。米子建築塾は建築専門家の集団で2013年よりAIR475を企画運営してきた。2015年は前年に続き、アーティスト、カーン・リーとキュレーター、原万希子をカナダ、バンクーバーより招聘した。

これまでのAIR475は、米子の中心市街地活性化の契機を期待して、シャッターの閉まった商店街の空き店舗などを舞台に作品制作や、ワークショップ等を中心に展開してきた。ところが、2015年はアーティストの要望で、米子市の郊外弓ケ浜半島に広がる休耕地に繁茂する外来種、セイタカアワダチソウを素材としたランドアートに取り組みたいという。

この段階ではセイタカアワダチソウはまだ生育途中で、どの場所でどの程度の密度で繁茂しているか判断が難しい。また、制作の場である休耕地の大きさは幅100メートルを超える想定で、一つの農地にみえてもその所有者は数人から数十人にもなることも。所有者を捜し、使用の許可を得、また一部転用の手続きを進める準備作業はとても困難なものであった。

加えて会期の冒頭に植物学者や農業の専門家を招いてシンポジウムを開催し、農業者の思いや、セイタカアワダチソウの客観的な情報を知る。これらの過程の中で私たちは思い知ることになった。これまで休耕地や、外来種セイタカアワダチソウが繁茂する様を地域の社会問題として認識していた。しかし、ぼんやりと見ていただけでなにも分かっていなかったし、知ろうともしていなかったのだ。

3週間にわたる作品制作という草刈り作業は、農地との格闘であった。カーン、原はじめ、多くのボランティアの協力のもとにつくられた作品は、私たちの想像をはるかに超えるものとなった。セイタカアワダチソウを刈り込んだ「一場春夢(いちじょうのしゅんむ)」。この言葉は人生の栄華が春の夢のごとくはかなく消えてしまうことを表す故事成語であり、一瞬の夢のような時間を多くの協働者が精いっぱいの力を尽くしたこのプロジェクトを表す言葉となった。

アートはそれ自体で地域課題を解決するものではなく、その美しさを超えて触媒のように反応し、私たちに新しい世界を見せてくれる。その可能性がこの地域での日常、そして未来を拓いていくものであると信じている。

(建築家、米子建築塾AIR475事務局 来間直樹)

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