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まちのアイデンティティを確認していく:〈よどえアートプロジェクト〉レビュー

Jul 5, 2015
まちのアイデンティティを確認していく:〈よどえアートプロジェクト〉レビュー

鳥取藝住祭2015のスタートを飾り、連日多くの来場者でにぎわった〈よどえアートプロジェクト〉。県外より3組のアーティストを迎え、かつて酒蔵だった空間を大胆に利用したインスタレーション作品を展開しました。

岡山から参加したアーティスト、胡桃澤千晶は、淀江の入江にたゆたう静かな水の佇まいやまちを通り抜け海に流れていく複数の淀江の湧水からインスピレーションを得て《よどみにうかぶうたかたは》という作品を制作しました。

手のひらにおさまるサイズの水雫を空中に無数に配する、というシンプルな構成ですが、水雫やテグスに反射される窓からの光とも相まって、美しく静謐な空間を生み出しました。

「人々の生活を潤し、浄化し、海へと流れ、水と共に浄化された様々な想いが、海に流れ込んで溜まっている。そして、入り江は大きな浄化槽のようであり、その浄化された水が海で雲になり、目の前の大山に雨を降らし、また湧き水となり淀江に帰ってくる」

そうした永遠とも思えるサイクルを感じさせ、訪れた人を魅了しました。

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同じく岡山から参加した藤原裕策は、淀江のサイノカミ(男女を形どった双体道祖神の石神)信仰や、好意を寄せる相手の顔に似た石を探し、恋愛成就の祈願をするという、淀江に伝わる風習に着目しました。
淀江で出会った様々な石や草を紙に転写していくという滞在制作を行い、ものの形や手触りに重ねられる人の願いや祈りを想起させる作品《石文、ミラグロ、よいとまかせ》を生み出しました。

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また、習慣・歴史・習俗など、過去から現在にわたる人間の営為とその痕跡に向き合い、そのメディウムやコンテクストを通じて多様な関係性を彫刻化してきた湯川洋康・中安恵一は、兵庫からの参加。
今年、第18回岡本太郎現代芸術賞に入選し、今後の展開が期待されます。
今回、淀江の歴史的背景に惹かれ、まとまった作品発表の場として淀江を選び、<それぞれ漂い、刻まれ、漂う偶然>という一連の彫刻作品を発表しました。

そのうちのひとつ《漂い、刻まれ、漂う彫刻》は、よどえの海岸で出会った鴨の亡骸から拾い集めた羽を用いて制作しました。
命が閉じることやまた開くことの偶然性や必然性を思わせる作品です。

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また《二つの顔》という作品は、良縁を願う若者が相手の顔に似た小石を海辺から拾い、サエノタワという山に奉ったという淀江の信仰をモチーフとしています。
淀江の海岸の波に洗われた美しい楕円形の自然石数点と、意図的に女神Junoの顔を彫刻した石1点を並べてみせた作品。不思議なことに、顔の形が露わになったJunoではなく自然石のままの方が、個々の人間の祈りや願いを汲む器量があることを示すかのようです。

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アーティストを淀江に出会わせることで、まちとしてのアイデンティティを丁寧に確認していくような内容となった〈淀江アートプロジェクト〉。来年度、再来年度と、今後どのような深化や展開が見られるのか、期待したいと思います。

※〈よどえアートプロジェクト〉の会期は終了しましたが、10月下旬までの毎週金曜日17:30~23:00、作品制作風景や展示作品の記録写真が公開されます。この機会にぜひ足をお運びください。

………………

〈よどえアートプロジェクト〉
会期:2015年6月20日(土)~28日(日)
会場:ギャラリア大正蔵(鳥取県米子市淀江町)
アーティスト:胡桃澤千晶、藤原裕策、湯川洋康・中安恵一
http://yodoeartproject.weebly.com/

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